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まるで探偵! 企画展に出す作品を調査・探し出す美術館研究員がすごい

美術館の“裏側”公開ツアー【日本美術 篇】

調査や交渉、集荷と何でもこなす研究員たち

 横山大観や菱田春草、岸田劉生など明治から現代までの日本美術約1万3000点を所蔵する東京国立近代美術館(以下、東近美)の展覧会は、研究以外にも一人で何役もこなす研究員たちによって支えられている。東近美の研究員・鶴見香織さんは「お金がないので全部自分たちでやるしかないんですよね〜」と自嘲気味に笑うが、どこか楽しそうだ。

 展覧会の準備は通常で3、4年前から。最初の大仕事は所蔵先と作品調査。代表的な作品の所蔵先はあらかた把握しているが、問題は世に出ていない作品の行方だ。
「展覧会で見せたくても今まで出品されていないために、所在がわからない作品もあります。そんな作品の行方も探します。戦前の画集などを手掛かりに画商さんや関係者からも情報を得ながら現在の所蔵先を見つける。こうした作業を何カ月間も続けて、出品候補のリストアップをします」。
 最近では、インターネットで所蔵先を見つけたこともある。
「50年前の所蔵者が移転していたので、試しに所蔵者名でネット検索をかけてみたんです。するとメールアドレスらしきものが見つかり、ご本人でした。作品も『まだ持っています』というご返答。万策尽きた中でしたので、まさに奇
跡が起きた瞬間でした」。

 作品の所蔵先が判明しても、借用できるか否かは別の問題。交渉はタフな仕事だという。「もちろん門前払いもあります。それに個人所蔵の場合、人に知られることを嫌がることも多いので私たちは絶対に秘密を洩らしませんと、粘り強く交渉していきます」。
 ようやく出品の許可を得て、オープン直前には集荷が始まる。美術品専門の業者とともに、トラックには不測の事態に備えて研究員も同乗する。行先は全国各地。借用先は何十カ所もあり、1度の出張で数日かかることも珍しくない。「雪で高速道路に閉じ込められ借用先に辿り着けず、同乗した研究員が残りの借用先の予定をその場で組み直したこともありました」。
 こうして研究員ひとり一人の手で集められて展覧会開催を迎える。「誰もいない開会直前の会場を見回すと、自分の描いたイメージがようやく具現化したことを実感。ちょっとホッとする瞬間ですね」。
 研究員の情熱や労苦を思うと、展覧会が一味違って楽しめそう。

雑誌『一個人』2018年3月号より構成〉

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